【特設4】松竹系の販売状況

映画『この世界の片隅に』の興行的好調を支えているのは、もちろんイオンシネマさんだけではありません。

片渕須直監督の前作、マイマイ新子の配給元である松竹さんも、実は兼ねてから恐るべき力を発揮していました。

 

昨年クリスマスのテアトル新宿から新宿ピカデリーへのスイッチ上映はファンの方々には記憶に新しいことと思います。

 

加えてマイマイ新子新宿ピカデリーでのリバイバル上映、デジタルシネマパッケージ (Digital Cinema Package: DCP*) 化や、『この世界の片隅に』の 2/4 (土) からの上映館大幅増加など、どしどし話題が続いており、松竹さんの勢いも目が離せません。
*35mmフィルムに替わる、デジタルデータを用いた映画(デジタルシネマ)の上映方式

 

 

デイリー新潮 (2/8) 記事より (『この世界の片隅に』のヒットで前作にも注目 等々)

 

随分と遅くなってしまいましたが、本特設コーナーでは松竹系シネコン (MOVIX) の販売数変動などにスポットを当てていきたいと思います。
 ・こどものせかいはこちら

 

【結論】

  • MOVIX 系は第12週の座席減少時にも販売数を伸ばしていた
  • 高い販売率を誇る MOVIX 系の合計座席数に占める割合は2/4 の上映拡大後、年初に比べ2倍以上に増大
  • 松竹の安定力が着実に浸透しつつある状況

 

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図: 元旦からの時系列. (a) 座席数, (b) MOVIX 系の 6CC 等に占める座席の割合と MOVIX 系内における順位, (c) 販売数,
(d) 1上映回あたり座席数と販売数, および (e) 販売率の相対値

 

【注意点】
 ・1/7, 1/14, 2/3 は MOVIX 系の取得エラーのため、6CC等合計値から推定
 ・1/24 からデータ取得締時刻が上映25分前から上映10分前に変更
 ・順位は見守りサイト内のランキングで、同じ作品でも吹替, 字幕, 2D, 3D などをそれぞれ区別。
  ライブビューイングも含む
 ・6CC (Cinema Complex): MOVIX, AEON, 109, UNITED, KINEZO, TOHO

 ・取得締以降の販売数は反映されないので、最終的な販売数はより多い可能性が高い

 

 

【結果】
 結果1《1ヶ月強の間の変化の特徴》

  1. 1/7 (土) から合計座席数は増大しているが、MOVIX 系は急激には増えていない (図a)
  2. 2/4 (土) まで MOVIX 系の座席数は漸増 (図a)
  3. 1/27 (金) は一時的に減少しているが、1/28 (土) の 6CC 合算座席数減時も MOVIX 系は 7000 程度で大きくは減っていない (図a)
  4. 2/4 (土) で大幅に座席数増  (図a)
  5. 1/7 (土) に一旦座席数の割合は 10% 程度から 7% 程度に減少、その後漸増し 2/4 時点で約18% (図b)
  6. MOVIX 内順位は 1/10 あたりから急上昇し、それ以降、特に平日において高い5位以内ランクイン率 (図b)
  7. 合算販売数は第12週から低下しているが、MOVIX 単独では上昇基調 (図c)
  8. 1上映回あたり座席数は 1/7 (土)、1/21 (土)、2/4 (土) に段階的に上昇 (図d)
    (〜140 → 〜230 → 〜240)

 

 結果2《その他シネコン平均と比較した場合の特徴》

  1. 1上映回あたり座席数は必ずしも 6CC 平均値よりも高いわけではないが、販売数は概ね平均値よりも高い (図d)
  2. MOVIX の販売率はその他 5CC の販売率と比較すると年初より継続して高く、300% を超える状況もみられた (図e) 

 

 結果3《1週間の間の変化の特徴》

  1. 販売数は週末および水曜日にピークがある

 


【考察】

  • 1/7 の拡大公開時には松竹系の座席急増はなかったが、2/4まで漸増、段階的に上映スクリーンをより大型のものに変更したと推定される (結果1)
  • この漸増は第12週の座席減少時にも続いたため、座席数減少の影響が MOVIX 系は少なく、販売数の増加が維持されたと考えられる (結果1)
  • MOVIX 系は座席数に対して高い販売率を維持しており、2/4 の拡大上映後もその状況が続いている (結果2)
  • 6CC 等合算座席数に対する MOVIX 系の占める割合は増加しており (結果1)、高い販売率 (結果2) を維持できれば今後の販売増につながることが期待できる
  • なお、毎週水曜日のピークはレディースデイ効果と思われる (結果3)